東京高等裁判所 昭和53年(ネ)2978号 判決 1982年7月14日
控訴人
日本国有鉄道
右代表者総裁
高木文雄
右訴訟代理人
森本寛美
同
西迪雄
同
井関浩
右指定代理人
関場大資
外八名
被控訴人
松浦巌
右訴訟代理人
後藤孝典
同
弘中惇一郎
同
新美隆
右訴訟復代理人
内山茂樹
主文
原判決を取り消す。
被控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
事実《省略》
理由
一<証拠>によると、被控訴人が、昭和五〇年二月二〇日福井駅において、新大阪・東京駅間の東海道本線新幹線(以下「新幹線」という。以下、特に記載しない限り、原判決事実欄記載の略語を用いる。)を利用するため、大阪市内・東京都区内間の普通旅客運賃として二八一〇円、新大阪・東京間の新幹線自由席特急料金として一七〇〇円を支払つて、右区間の普通乗車券並びに新幹線自由席特急券の交付を受け、運送契約が成立したことが認められ、右認定に反する証拠はない。
二新幹線各駅間の実測キロが、原判決添付の別表1のとおりであり、新幹線の新大阪・東京間の実測キロが515.4キロメートル、新大阪・大阪間の実測キロが3.8キロメートル、新幹線経由大阪・東京間の実測キロが519.2キロメートルであることは当事者間に争いがない。
三控訴人の経営にかかる鉄道の運賃を定める基本法として運賃法が存在し、運賃法に基づいて営業規則が存在するところ、運賃法(前記運送契約が成立した当時効力を有するもの。以下、法規については、特に記載しない限り同様とする。)には、
1 鉄道の普通旅客運賃の賃率は、営業キロ一キロメートルごとに、六〇〇キロメートルまでの部分については五円一〇銭、六〇〇キロメートルを超える部分については二円五〇銭とする。(第三条第一項)
2 鉄道の旅客運賃は、営業キロの区間別に定めるものとし、その額は、各区間の中央の営業キロについて前項の賃率によつて計算した額とする。(同条第二項)
3 この法律に定めるものの外、旅客又は貨物の運送に関連する運賃及び料金並びにこの法律に定める運賃及び料金の適用に関する細目は、日本国有鉄道がこれを定める。(第九条本文)
との各定めがあり、営業規則には
1 東海道本線及び山陽本線と東海道本線(新幹線)及び山陽本線(新幹線)とは、同一の線路として旅客の取扱いをする。(第一六条の二第一項)
2 鉄道の普通旅客運賃は、発着区間のキロ程を次のキロ程に従つて区分し、これを各そのキロ程に対する賃率に乗じた額を合計し、一〇円未満の端数を一〇円単位に切り上げて計算した額とする。
六〇〇キロメートル以下のキロ程一キロメートルにつき五円一〇銭
六〇〇キロメートルをこえるキロ程一キロメートルにつき二円五〇銭
(第七七条第一項)
3 前項の規定によるほか、鉄道の普通旅客運賃は、次の各号に定めるキロ程のものを適用する。
(1) 一一キロメートルから五〇キロメートルまで
一一キロメートルから五キロメートルごとに区分し、一一キロメートルから一五キロメートルまでは一三キロメートルとし、一六キロメートル以上は、これに一区分増すごとに五キロメートルを加えたキロ程とする。
(2) 五一キロメートルから一〇〇キロメートルまで
五一キロメートルから一〇キロメートルごとに区分し、五一キロメートルから六〇キロメートルまでは五五キロメートルとし、六一キロメートル以上は、これに一区分を増すごとに一〇キロメートルを加えたキロ程とする。
(3) 一〇一キロメートルから六〇〇キロメートルまで
一〇一キロメートルから二〇キロメートルごとに区分し、一〇一キロメートルから一二〇キロメートルまでは一一〇キロメートルとし一二一キロメートル以上は、これに区分を増すごとに二〇キロメートルを加えたキロ程とする。
(同条第二項(1)ないし(3))
4 東京都内及び大阪市内にある駅と、当該中心駅(東京駅、大阪駅)から片道二〇〇キロメートルをこえる鉄道区間内にある駅との相互間の鉄道普通旅客運賃は、当該中心駅を起点又は終点としたキロ程によつて計算する。(第八六条)
の各規定が存在する。
四<証拠>によると、控訴人は新幹線の開業に当り、その運賃について検討した結果、新幹線の運賃を在来線の運賃と同一にする方針を決定し、前掲営業規則第一六条の二を設けたうえで、新設駅である、新横浜について、東京・新横浜間28.8キロメートル、菊名・新横浜間1.3キロメートル、新横浜・小田原間55.1キロメートル、新横浜・小机間1.7キロメートルの営業キロを、岐阜羽島駅につき、名古屋・岐阜羽島間30.3キロメートル、岐阜羽島・米原間49.6キロメートルの営業キロを、新大阪駅につき、京都・新大阪間39.0キロメートル、東淀川・新大阪間0.7キロメートル、新大阪・大阪間3.8キロメートルの営業キロを定めてこれを公示し、その余については、対応する在来線の営業キロによつて運賃を徴する、すなわち在来線と同一運賃とすることとし、新たに営業キロを設定しないことにしたうえで営業を開始したこと、前記運送契約において控訴人が支払つた運賃はこのようにして在来線東京・大阪間の営業キロ556.4キロメートルに基づいて算定された運賃相当額であることの各事実が認められ、右認定に反する証拠はない。
五被控訴人は、新幹線経由大阪・東京間の運賃は、その間の実測キロ(519.2キロメートル)に基づいて、運賃法第三条に定めるところに従つてこれを定めるべきであり、これより長い在来線の営業キロを用いてなした右区間の運賃の定めは、財政法、特例法、及び運賃法の各規定に違反するもので無効である旨主張するので、以下、この点について検討する。
<証拠>を総合し、財政法、特例法、運賃法の各規定に照らすと次のとおり認められ、この認定に反する証拠はない。
1 国有鉄道の運賃は、諮問機関である鉄道運賃審議会の答申に基いて運輸大臣が定めるところとなつていたが、昭和二二年三月三一日公布された財政法において、「法律上又は事実上国の独占に属する事業における専売価格若しくは事業料金については、すべて法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」(第三条)ものとされ、国有鉄道の運賃も「国の独占に属する事業における料金」として、右規定に服することになつた。しかし、当時は戦後のインフレーションにより経済状態が不安定であつたため、右規定は施行されないまま経過していたところ、昭和二三年四月一四日公布された特例法により、製造煙草の定価、郵便、電信、電話、郵便貯金、郵便為替及び郵便振替に関する料金、国有鉄道における旅客及び貨物の運賃の基本賃率を除いては、当時の経済緊急事態が続く限り法律の定め又は国会の議決を経なくてもこれを決することができる旨の特例を設けたうえで、同月一六日財政法第三条が施行された。基本賃率については、特例法の附則において、「財政法第三条の規定施行の際現に効力を有する基本賃率は、財政法第三条の規定の施行の日において、同条の規定に基いて定められたものとみなす。」としたのみで、特段の立法措置はなされなかつた(製造煙草の価格、電信等の料金についても同じ)が、続いて運賃値上げのために基本賃率を改める必要に迫られた結果、新たに運賃法を制定(昭和二三年七月一〇日施行、ただし第三条ないし第六条は同月一八日施行)して基本賃率を法定するに至つた。同法では、一五〇キロメートルまでの部分、一五〇キロメートルをこえる部分に区分して、それぞれについて一営業キロメートル当りの額を定める方法をとつた(第三条)が、「全体として日本国有鉄道の総収入に著しい影響を及ぼすことがない運賃又は料金の軽微な変更は、運輸大臣(昭和二四年六月一日以降は日本国有鉄道)がこれを行うことができる。」との規定(第八条)及び前記の委任規定(第九条本文)が設けられたほかには、基本賃率の適用等運賃決定のための具体的な規定は何ら設けられず、「営業キロ」の用語の意義についても何ら規定されなかつた。その後、運賃法に、運賃は営業キロの区間別に定める旨の規定(前記第三条第二項)が新設された(昭和四四年五月一〇日施行)が、これは控訴人が昭和四一年三月以降遠距離部分について採用実施していた同制度を、昭和四四年五月の運賃改定の際、全面的に適用することとなつた関係から、その根拠を法規上明確にし、疑義の生ずるのを避けるため、立法措置が講じられたものである。
2 国有鉄道の普通旅客運賃については、財政法第三条施行以前から、概ね次のように行われ、運賃法施行当時も維持されていた。
(一) 運賃は一キロメートル当りの賃率に輸送キロ程を乗じて決定する(対キロ運賃制)。賃率は、輸送距離に応じて区分し、遠距離部分について低い賃率を定める(遠距離逓減制)が、地域、路線によつて区別せず全国一率に適用する(全国一率賃率制・総合原価主義)。なお、連続する路線のキロ程は通算して運賃を算定する(キロ程通算制)。
(二) 運賃算定の基礎となるキロ程は「営業キロ」である。営業キロは、実測キロとは異なつた概念として国有鉄道の経営上古くから用いられているものであつて、運輸大臣が駅の区間ごとにこれを定めて公示する。営業キロの設定は、原則として実測キロの端数を処理したところによつてなされるが、競合する他の交通機関との運賃の調整等の必要から、特定の区間につき、実測キロと異なる営業キロ(擬制営業キロ)を設定することも行われていた。また、既設の路線に線路が増設された場合には、その実測キロにかかわらず、従前の営業キロをそのまま用いるのを例とした。
(三) 運賃は、実際に乗車する区間及び経路によつて算定するのを原則とするが、東京都区内、東京山手線内、大阪市内の所在駅とそれぞれの中心駅から一定の距離以上の地点にある駅との相互間の運賃は、中心駅を起点又は終点としたキロ程によつて計算する制度(特定都区市内制度、東京山手線内制度)や、起点及び終点を同じくし、経路を異にする路線が競合する場合に、特定の路線について、競合する路線の何れを経由しても、キロ程の短い路線のキロ程を用いて運賃を定める制度(経路特定制度)を設けるなどして、乗車券発売業務の簡素・合理化、旅客の利便増進が図られた。
以上の事実に基づいて検討すると、次のとおり解することができる。
財政法第三条が、国の独占に属する事業の専売価格及び事業料金の決定権が、その経営を担当する行政庁に属していたのを改めて、法律又は国会の議決に基づいて定めるべきものとしたのは、これらの価格及び料金が、一方では国の財政と重大な関わりを持つと共に、他方では国が国民に課する負担の性格を有し、国民の生活に重大な影響を有するところから、これを立法府である国会の議に基づいて決すべきものとしたものであることは、その規定に照らして明らかであり、運賃法が制定、施行されるに至つた前記経過に照らすと、運賃法が、財政法第三条、特例法の趣旨に従つて制定されたものであり、国有鉄道の運賃を法律の規制のもとに置き、経営担当機関たる運輸大臣(後に控訴人)の裁量により自由に運賃を定めることを排する趣旨であることは、いうまでもないところである。
ところで、運賃法は運賃の賃率を営業キロ一キロメートルごとの金額をもつて定めている(第三条)ので、個別の運賃は、右の賃率に旅客が実際に乗車する区間・経路の営業キロ数を乗じた額によるのを原則とすべきことはいうまでもない。しかし、右の原則を実際に適用・実施するについては、各種の細目の定めを必要とするほか、業務の効率的運用、旅客の利便等を図るため、右の原則に対しある程度の調整ないし修正措置を講ずる必要のあることは、前に認定した運賃法施行前における運賃算定方法からも窺われるところであるのに、運賃法が第三条において前記賃率を定め、第九条において運賃適用に関する細目の定めにつき経営担当機関に委任しているのみで、運賃の算定方法について他に何ら具体的な規定を設けていないことからすると、同法は前記のような調整ないし修正措置を排斥する趣旨ではなく、むしろ、従前の運用を前提として、この点については経営担当機関の裁量に委ねたものと解するのが相当である。もつとも、右裁量権の行使については、運賃法の前記立法趣旨からする制約のあることはもちろんであつて、その調整ないし修正措置は、国有鉄道の業務運営の効率化、旅客の利便等の見地から十分な合理性を有するとともに、原則に従つた場合と比較して利用者に著しく重い負担を課するようなものでないことを要すると解すべきである。また、「営業キロ」は国有鉄道の経営上古くから用いられて来た概念であつて、経営担当機関が原則として実測キロに基づいて定めるが、必要に応じてその裁量により実測キロと異なる営業キロを設定する例もあつたところ、運賃法が営業キロをもつて運賃算定の重要な要素としながら、その意義や定め方等について何ら規定していないことからすると、必ずしも右の裁量を否定する趣旨とは解されない。もつとも、その裁量が運賃法の立法趣旨による制約を受けるべきことは前に述べた場合と同様であつて、例えば専ら運賃の増収を目的として実測キロより長い営業キロを設定するようなことは、実質上賃率を変更するにひとしく、許されないものというべきであろう。
そこで、控訴人が、新幹線の運賃を定めるに当り、在来線の営業キロを用いることとしたことの適否について検討する。
1 在来線が、昭和三〇年初頭に至り、その輸送力が限界に達し、昭和五〇年度には、昭和三三年度に比して、旅客、貨物とも需要が二倍以上になることが予想された。そこで、控訴人は昭和三二年七月二日運輸大臣に、路線増設の必要を説明し、政府の決定と指示を求めた。運輸省に設置された幹線調査会は、昭和三三年七月七日運輸大臣に対し「東海道本線の行き詰り打開のため新規路線を早急に建設する必要があり、新規路線の運賃については、新規路線が現在線と総合一体の施設であることに鑑み、新規路線の各駅間のキロ程が対応する現在線のそれと比べて多少の相違があるとしても、現在線の駅相互間における運賃と同額とする。」旨を答申した。昭和三三年一二月一九日に新幹線建設の閣議決定がなされ、昭和三四年四月一三日運輸大臣により、日本国有鉄道法第五三条による線路増設工事の認可を得て建設工事を施行し、昭和三九年一〇月一日からその営業を開始した。
以上の事実については当事者間に争いがない。
2 <証拠>によると次の事実が認められ、この認定に反する証拠はない。
控訴人は、新幹線を開業するに当り、その運賃の定めについて検討したが、新幹線は、その手続において在来線の増設線として認可され建設されたものであり、その輸送の実体においても在来線と一体をなすものであると認識していたこと、従前から増設線については既設線の営業キロを使用する慣行があること、新幹線については在来線の運賃と同額にすべきであるとの幹線調査会の答申があること、新幹線と在来線の営業キロを別にし、運賃を二様にするときは、乗車券の発売等の業務が著しく複雑となり、多数の乗客を短時間に取扱ううえで紛糾を生じ、旅客の利便をも損なうおそれがあり、また、これに対応するためには、新たな人手、設備とこれに伴う費用が必要となること、新幹線の運賃を在来線の運賃より高額にするときは、在来線の利用者を新幹線に移行させるについて問題があり、在来線の運賃より低額にするときは減収となること、控訴人においては運賃法の解釈について、営業キロの決定は、控訴人の裁量によつて決定し得るものと考えていたことなどの理由により、新幹線の運賃は在来線の運賃と同一とし、新設駅を除いては新たに営業キロの設定は必要ないものとして開業することに決し、そのための措置として、営業規則中に、「東海道本線と東海道本線(新幹線)とは同一の線路として旅客の取扱いをする。」(第一六条の二第一項)との規定を設けた。新幹線(東海道線)は、新横浜、岐阜羽島、新大阪の新駅を設置したほかは、在来線と停車駅を共通にし、その後開業した山陽本線(新幹線)、鹿児島本線(新幹線)も、新神戸、新岩国の二駅を新設したほかは、在来線と停車駅を共通にした。新幹線の運賃を実測キロによつて定めることとして、在来線の運賃と二様に定めた場合、これに対応するための人的、物的配備に要する経費として、実施当初において概ね二七〇億円を、実施後各年度において概ね二五〇億円を要するものと見込まれる。
以上のとおり認められるのであつて、新幹線は、その設置の目的において、在来線と一体として、その輸送の増大に対処するにあり、建設の手続において、在来線の増設として進められたのであり、その運用の実体においても、起点及び終点はもとより、中間の停車駅も、前記の少数の新設駅を除いては在来線の停車駅と共通にし、従つて輸送の対象地域も共通にしているのであつて、在来線と新幹線は一体をなした線路と解するのが相当である。
もつとも、(1)新幹線が、いわゆる広軌を採用しているため、在来線と軌道の巾員を異にし、相互に乗入れることができず、高速専用の線路であること、(2)新幹線が、新幹線総局の管理のもとにおいて、独自の運行管理が行われていること、(3)新幹線が運行されてからは、在来線には、夜行列車に長距離列車が残されているほかは、長距離列車が殆んど廃止されていること、の各事実は公知の事実であり、これらの点が、従前の、単線が増設により複線になつた場合、複線が増設により複々線になつた場合とは著しく異なることもまた公知の事実である。
しかしながら、当該線路を一体として捉えるか否かは、輸送機関としての機能の実態に基づいて決すべきであるところ、右(1)は単に使用する機器、設備の問題であり、(2)は控訴人内部の業務分担に関する組織の問題であり、(3)は在来線と新幹線の役割りの分担の問題で、新幹線を伴わない線路においても、高速長距離列車(特別急行列車等)とその余の列車との間においても生ずることであつて、却つて、新幹線と在来線とが、輸送対象の旅客を分担し、一体として運行されている結果というべきであり、いずれの点も、新幹線と在来線が交通機関として一体と解することの妨げとなるものではない。
控訴人が、新幹線の運賃を決するに当り、新幹線の実測キロによつて営業キロを定め在来線の運賃と別に定めることによつて生ずる収入の減少と、支出の増加の回避を考慮したことは既に認定したとおりである。しかし、前者については、在来線の増設線と考えられ、在来線の運賃を増額するものではないうえ、他の考慮事項とともに考慮されたものであるから、専ら運賃の増収を意図したものとはいえないし、後者については、できる限り業務を合理化し経費を要しない方法を工夫、選択することは、経営を担当する者が当然になすべきことであつて、その結果支出を免れたとしても何ら非難するには当らないというべきである。
また、利用者の負担の点についても、在来線と新幹線の実測キロの対比(原判決添付別表1参照)から明らかなように、この制度の実施が利用者に著しい負担増をもたらすものということはできない。
以上のとおりであるから、控訴人が、新幹線の運賃を定めるについて、新幹線が在来線の増設線であつて、両線が一体をなす線路であるとの判断のもとに、新幹線の実測キロによらず、在来線の営業キロを用いることにしたことは、運賃を定めるについて、運賃法が予定している裁量の範囲内に属する事項であり、その裁量の結果においても十分な合理性を有し、運賃法の規制の趣旨を逸脱するものでもないというべきであり、新幹線の運賃の定めは、運賃法第三条に違反するものということはできない。
六してみると、新幹線の運賃の定めが運賃法に違反することを前提とする被控訴人の本訴請求は理由がないものというべく、これを認容した原判決は失当で、本件控訴は理由がある。
よつて、原判決を取り消して、被控訴人の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第九六条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(村岡二郎 宇野榮一郎 川上正俊)